オダランでの舞踊・その3<2016年12月>

dance12-31/12/16
こんにちは。年末年始のバリ島滞在、12月31日のオダランの続きです。
夜には次々と余興の舞踊が続き、最後から2つ目は”Baris (バリス)”だ。
”バリス”はもともと、儀式として重要な意味を持つ神聖な奉納舞踊の一つで、
大勢の男性が武器を手に踊る、神々を護衛する勇士の踊りだ。
余興などで1人で踊るバリスは、それを参考に作られたもので、
”Baris Tunggal(バリス・トゥンガル)”と呼ばれる。
若い戦士が戦いに赴く様を表現したもので、緊張と恐れのあまり動揺しながら、
しだいに度胸を据えて、前進していく。

バリス・トゥンガルは、踊りを習う男の子が最初に覚えるものだそうで、
観光公演でもよく見る演目だ。
dance13-31/12/16
舞台裏から、小さい男子たちが真剣に見入っている。
この子たちも踊りを習っているのかもしれない。
ためらうように進み出た戦士は、怯え、震え、ためらいながら、
やがて大きく体をひるがえし、進んでいく。
この時、たくさんの布を重ねた独特の衣装がパッと開くのが華やかで、
戦士の心の高鳴りを表しているかのようだ。

”バリス”は曲もとてもポピュラーで、ガムランのCDにもよく入っている。
CDで聞いても迫力のある曲だが、この時、間近で生のガムランを聴いていると、
うねって駆け巡る音の波に圧倒され、ゾクゾクする凄みがあった。
旋律楽器の合間から、レヨンの細かい音がさざ波のように絶え間なく、
空間をじわじわとうめて、迫り来るような音を奏で続ける。
レヨンは今まで比較的地味な楽器に思えていたが、印象がまるで変わった。
踊り手を煽り、観る人々の心を揺さぶり、見えない存在も呼び出すような、
そんなすごいガムランだった。

そして最後に、”Topeng(トペン)”の登場だ。
トペンは木製の仮面をかぶって演じる舞踊劇で、仮面そのものをトペンとも言う。
1人の演者が幾つのもの仮面を付け替えて演じる”トペン・パジェガン”は、
神事として昔から大きな祭礼には欠かせないものだ。
近年では祭礼でも複数の演者が演じて奉納するなど、スタイルが多様化しており、
また、余興や観光公演としても行われるようになっている。
topeng1-31/12/16
トペンの仮面は、日本の能面のように数種類のパターンがあり、役割が決まっている。
この面は”Topeng Keras(トペン・クラス=強いトペン)”と呼ばれるもので、
物語では冒頭に登場し、王の下で統治を支えるパティ(大臣)という役どころだ。
このオダランの余興では、舞踊の一つとしてトペン・クラスだけが演じられた。

奉納舞踊のトペンで使われる仮面は霊力の宿る神聖なものとされ、とても大切にされる。
仮面は通常籠に収められ、定期的に供物が供えられ、儀礼も行われる。
また演者は、トペン上演前には供物を捧げ、線香を焚いてマントラを唱え、
供物と籠に聖水をかけるそうだ。
そして蓋を開ける直前に3度蓋の隅を叩く演者も多いと言う。
これはワヤン・クリ上演でダランが人形箱を開ける時に蓋を3回叩くのとそっくりで、
仮面を呼び起こす、という意味があるのだそうだ。
演者はグルンガン(頭飾り、これも神聖なもの)を被り、丁重に仮面を装着し、
花飾りを両耳の上に差し込む。
この花はジュプン(プルメリア)やクンバン・メラ(オオゴチョウ)が使われ、
ギランの葉と糸で束ねて用意する。
また、頭飾りにもジュプンの花やパンダンの葉をつける。
ギランやパンダンの葉には守護の力があるのだという。

少し話がそれるが、ギランの木についてちょっと書いておきます。
GirangギランはGirang girang(ギランギラン)とも呼ばれる木で、
インドセンダン(ニーム)のことだ。
この木は葉などが広く薬用になり、バリ島でもあちこちに植えられている。
これは以前泊まったホテルの庭にあったもので、かなり大木だった。
girang-girang1-12/03/13
葉は、縁の鋸歯(ギザギザ)がよく目立つ。
girang-girang2-26/12/12
師匠宅でも育てていて、まだ若木なので上から見るとこんな感じだった。
girang-girang3-14/08/14

さて、オダランのトペンの話に戻ります。
トペンの顔の両脇、耳元に垂れているのがそのギラン(ギランギラン)の葉だ。
topeng2-31/12/16
仮面の髭や眉や髪には、ヤギや猿など動物の毛皮や人毛が使われる。
額には装飾やお守りとして、天然石をはめ込むことも多い。
ところで、トペンは木製の仮面で表情は変わらないはずなのに、
演者の動きで、なぜか顔の表情が変わるように見えることがある。
この時も、何だか一瞬、眉毛が動いて目を見開いたように見え、
ちょっと怖い感じさえしてきた。

でも周りにいる人々はもうくつろいで、見たり見なかったりで、
何か食べたり飲んだり、ピクニックのような雰囲気だ。
topeng3-31/12/16
こういう感じが、バリのオダランらしくていいなと思う。

高々と積まれた供物、神聖な仮面をつけて演じられるトペン、
それを余興として人々は楽しみ、聖と俗が入り混じる世界だ。
topeng4-31/12/16
オダランでお寺に降臨する神々も、人々にとっては身近な存在で、
神事とお祈りを済ませた後は、一緒に余興を楽しむのだと思う。
そして、家族や地域の人々も、見えない存在も、同じひと時を過ごして、
つながりを深め合うのだろうなと思った。

明日は、オダランからの帰り道のことを書きます。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。
明日も良い一日でありますように!

※トペンについては、次の本を参考にしています。
    「バリ島仮面舞踊劇の人類学」吉田ゆか子著 風響社
※舞踊については、次のサイトを参考にしています。
   (舞踊名をクリックするとリンクします。詳しく見たい方はご覧になってみてください)
     「バリ舞踊図鑑Padmanila」より「バリス・トゥンガル」
関連記事
プロフィール

里花

Author:里花
花々と緑あふれる大好きなバリ島に、17年ほど前から通い続けています。
神々への感謝と祈りとして芸能を捧げるこの島で、ここ数年の滞在中は伝統音楽ガムランの楽器グンデル・ワヤン(上写真)を習っています。
現在東京在住ですが、近いうちバリ島に住みたいです。

最新記事
最新トラックバック
カテゴリ
カレンダー
02 | 2017/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
検索フォーム
リンク
☆お願い
素人写真ですが、写真の無断使用はご遠慮ください。 記事文を引用される場合は、引用元明記の上、なるべく当方へご連絡ください。 質問や不明点等ありましたら、お気軽にコメント欄でお問い合わせください。