サプ・レゲール@依頼者宅⑥聖水、お弁当<2016年12月>

wsl.n.28-30/12/16
こんにちは。12月30日のサプ・レゲール儀礼の続きです。
ワヤン・サプ・レゲールの物語が終わると、ダラン(人形遣い)は、
儀礼を受ける人を浄める聖水を作る。
清らかな水で満たされた壺がダランに渡されると、ダランは線香を焚き花を入れ、
マントラを唱え、最後に、今上演に使った神々のワヤン人形を使う。
シワ神、カヨナン、アチンティア、トゥアレンの4つの人形を重ね、
その軸棒の先を壺の水に浸すのだ。
すると、その神々の力が浄水へと宿り、人々の穢れを祓う聖水となる。
この聖水は、プダンダ(高僧)が作るのとはまた違うもので、
マンク・ダラン(聖水を作ることができる、僧侶の役割を持つダラン)にしか作れない。
そして、ウク・ワヤン生まれの人をカラ神の呪いから解くためには、
必ず欠かせないものとなる。
本によれば、仮に莫大な費用がかかるサプ・レゲール儀礼が催せない場合でも、
この聖水さえあれば、浄めることはできるのだと言う。
聖水を作る動作が始まると、演奏は”Sudamala(スダマラ)”という曲を始める。
”スダマラ”は穢れを浄める、という意味があり、この曲は聖水を作ったり、
それを人々にかけたりする時にいつも演奏される。

聖水が出来上がると、ダランはまず、舞台に振りかけて浄めた。
wsl.n.29-30/12/16
ダランが右手に持っている、ヤシの葉を束ねたものはLisという道具で、
様々な祭礼や儀礼で、聖水をかけて敷地内を回る”ムリス”の時にも使われる。

ダランと助手は、聖水の壺とLis、それに聖水を作るのに使った神々の人形などを持ち、
立ち上がってスクリーンの前側へと出て行った。
wsl.n.30-30/12/16
スクリーンの前側つまり中庭の会場は、既に灯りが煌々とつけられている。

スクリーンのすぐ前にダランと助手が立ち、最初に聖水を受ける人が2人出てきた。
ボケた画像だが、こんな感じで会場は熱気がいっぱいだ。
(個人宅のため、はっきり映った画像はあえて控えています)
wsl.n.31-30/12/16
聖水灌頂の間は演奏を続けているので、私はその場では見ていないのだが、
後で見たビデオの映像によると、流れはこんな感じだった。
最初に聖水を受けた2人は、40代くらいの男女の方だった。
ダランは聖水にたっぷり浸したLisを、何度も2人の頭や肩などにかけて
マントラを唱えながら、丁寧に浄めていく。
そしてダランは、今度は聖水の入った小さな壺を持ち、そこから直接、
2人の頭に聖水をたっぷりかけていく。
聖水が滴り、中に入った花びらも流れ出て辺りに散っていく。
それから2人は、手に聖水を受けて飲む。
寺院参拝のお祈りの時などは3回飲むくらいの動作だが、
ここではそれを20回くらい行っていた。
その後、ダランは先ほど聖水を作るのに使った神々のワヤン人形を重ねて持ち、
それで2人の頭をそっとなでていく。
(私はここの場面が、神々に頭を撫でてもらっているような優しさを感じて、
とても好きだ)
最後に、2人は聖水に浸した米粒を受け取り、額や喉につけて数粒は飲み込んだ。
やはり個人宅での儀式とあって、集会所での合同サプ・レゲールよりも、
時間をかけて丁寧に聖水をかけているように思った。

ところで、バリ島ウク暦でワヤンの週(ウク・ワヤン)に生まれた子供を
カラ神の呪いから解き、穢れを祓うのが”サプ・レゲール”だ。
この儀礼は、本来は子供のうちに行うものらしいが、
大人になるまでできずにいることも多いようだ。
(本来は3回目のオトナン、つまり生後630日までに行うとされる)
集会所での合同儀礼も、参加者は大人の人が圧倒的に多かったし、
この日の儀礼のメインも、最初に聖水を受けた40代くらいのお二人のようだった。
物語の中での”呪い”は、”食べられてしまう”という形で出てくるけれど、
現実世界では、病気や事故などの災難、ということになるだろう。
迷信と片付け、何事もなければ忘れてしまうかもしれないけど、
やはり何かあれば、あるいはあったらと、気になってしまうのだろう。
大人になって費用の都合がつき、あるいは合同でも儀礼をする機会があれば、
やはりきちんとしておこう、となるのではと思う。
集会所でもそうだったが、この時も、聖水を受ける人はその後すっきりした表情で、
肩の荷が降りたように晴れやかな笑顔になっていた。

そして、たっぷり作られた聖水の残りは、別の人が受けてもいいようだ。
この時も、2人のあと、何人かが順番にダランの聖水を受けていた。
聖水タイムの間、演奏はSudamalaをずっと続けているが、
それでも合同儀礼の時よりはずっと早く、おしまいになった。

師匠がバチをしまい、ダランや助手が舞台裏に戻って片付けを始めると、
お弁当が運ばれてきた。
それを持ってもう帰るのかなと思ったら、主催者側の方が数人来て、
その場で歓談、という雰囲気になった。
楽器をはじに寄せて皆が車座で座り、お弁当を食べた。
nasi kota1-30/12/16
お弁当は大きな紙箱で、表はこんな感じだ。

ふたを開けると、ご飯とおかず、果物と水が入っている。
nasi kota2-30/12/16
おかずはバビグリンに揚げ卵、ミーゴレンなどだ。
私は演奏が終わると結構お腹が空いているので、
もう夜10時過ぎだったけど、ぱくぱくと頂いた。

この日は、師匠宅に午後4時半頃行って、集会所で供物を積んで出たのが午後6時頃、
ワヤンの上演は午後8時頃から2時間ほどだった。
こじんまりした会場でのせいか、ワヤンの上演はとても密度濃く感じられた。
ダランの語りも時に鬼気迫り、グンデルの演奏も、時に4台の音の波が大きくうねり、
炎の揺らめきとともに、その空間まで大きくうねっていくかのようだった。
まるで、海で泳いで波が来たとき、体がぐっと持っていかれるあの感じで、
音の波に体が持っていかれるような、そんな感じさえした。
こんなゾクゾクする感覚を味わえたのは、初めてのことだった。
まだ拙い演奏なのに参加できたのがありがたく、とても嬉しく思えた。

お弁当を食べて依頼者宅を後にし、皆でダランの車に乗り込んだ。
運転は助手さんで、ダランは助手席に座ってシートを少し倒し、
グッと体を伸ばして、気だるそうにしている。
そして、「明日は朝からダンスだよ〜」と笑いながら言う。
このダランさん、実はトペン(奉納仮面舞踊)の踊り手でもあり、
1つの儀礼でワヤン・クリとトペンをかけ持ちでやることさえある。
翌日は早朝から、トペンの上演が入っているようだった。
この週は「ワヤン」の週なのでサプ・レゲール儀礼が立て込んだ上、
他の儀礼も多かったようだ。
師匠も翌朝早くからペジェン村のサプ・レゲール儀礼に演奏に行ったと、
翌日になってから聞いた。
私はもう、この夜だけで心身ともクタクタで、翌朝も寝坊したけど、
皆は寝る間もろくにないほど忙しかったようだ。

さて、個人宅で行われた12月30日のサプ・レゲール儀礼の話は、
これでおしまいにします。
ワヤンの物語の内容などは、ビデオを見ながら後日調べているため、
細部など実際と違っている可能性もあります。
もし間違いがあり、後日気づいた時は訂正したいと思います。

明日は翌朝のことを書きます。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。
明日も良い一日でありますように!

 ※儀礼については、次の本を参考にしています。
   「バリ島ワヤン夢うつつ」梅田英春著 木犀社
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プロフィール

里花

Author:里花
花々と緑あふれる大好きなバリ島に、17年ほど前から通い続けています。
神々への感謝と祈りとして芸能を捧げるこの島で、ここ数年の滞在中は伝統音楽ガムランの楽器グンデル・ワヤン(上写真)を習っています。
現在東京在住ですが、近いうちバリ島に住みたいです。

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